医療費控除はいくらから — 個人事業主は 10 万円とは限らない (令和8年度版)
最終更新: 2026-08-24
目次
個人事業主が医療費控除を考えるとき「10 万円以上使わないと使えない」と思い込んでいることがありますが、それは所得が高い場合の話です。この記事では令和8年度(2026年分)の制度をもとに、計算式と個人事業主の合計所得の求め方を解説します。
要点 (令和8年度)
- 足切り額は「合計所得 × 5%」と「10 万円」の小さい方
- 合計所得が 200 万円未満なら足切りが 10 万円を下回る
- 合計所得 = 事業所得(売上 − 経費 − 青色申告特別控除)が基本
- 生命保険金・高額療養費は医療費から差し引いて計算する
- セルフメディケーション税制とはどちらか一方のみ選択
読み終えたら CashOnHand のシミュレータ で自分の売上・経費を入力して所得税・住民税の概算を確認できます。手取り全体の流れは 個人事業主の手取り計算 にまとめています。
医療費控除の計算式
令和8年度の医療費控除額は、以下の式で計算します(最高 200 万円)1。
控除額 = 実際に支払った医療費 − 補填される金額 − 足切り額
足切り額 = 合計所得 × 5% と 10 万円 のうち少ない方
「少ない方」がポイントです。合計所得が低いほど足切りが下がり、より少ない医療費から控除が使えます。
足切り額の早見表(合計所得別)
合計所得が 200 万円未満の場合、足切りは「合計所得 × 5%」が適用されます1。
| 合計所得の目安 | 足切り額 | 適用ルール | 医療費がこれを超えると控除が発生 |
|---|---|---|---|
| 50 万円 | 2.5 万円 | 所得 × 5% | 2.5 万円超 |
| 100 万円 | 5 万円 | 所得 × 5% | 5 万円超 |
| 150 万円 | 7.5 万円 | 所得 × 5% | 7.5 万円超 |
| 200 万円(境界) | 10 万円 | 200万×5%=10万(一致) | 10 万円超 |
| 300 万円以上 | 10 万円(一律) | 一律 10 万円 | 10 万円超 |
注: 合計所得の計算方法は次のセクションを参照してください。
個人事業主の合計所得の求め方
個人事業主の合計所得(合計所得金額)は、基本的に事業所得が中心になります1。
事業所得 = 事業収入 − 必要経費 − 青色申告特別控除(最大 65 万円)
青色申告特別控除を 65 万円差し引いた後の金額が、医療費控除の足切りを計算する「合計所得」になります。給与所得・不動産所得・株式の譲渡所得なども合算します。
売上と合計所得の関係(目安)
次の目安は CashOnHand の計算エンジンによる概算です(大阪市・青色申告特別控除 65 万円・経費 60 万円/年・単身・40〜64 歳)。
| 売上 (税込) | 事業所得の目安 | 足切り額 |
|---|---|---|
| 200 万円 | 約 122 万円 | 約 6.1 万円(所得×5%) |
| 250 万円 | 約 167 万円 | 約 8.4 万円(所得×5%) |
| 300 万円以上 | 約 213 万円以上 | 10 万円(一律) |
売上が 300 万円を超えると事業所得が 200 万円を超え、足切りは一律 10 万円になります。
医療費 30 万円の場合の節税額早見表
次の表は CashOnHand の計算エンジンによる概算です。大阪市・青色申告特別控除 65 万円・経費 60 万円/年・単身・40〜64 歳・補填金なし・医療費 30 万円(足切り後控除額 20 万円)の条件で試算しています。
| 売上 (税込) | 足切り額 | 控除額 | 所得税の節税 | 住民税の節税 | 合計節税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 250 万円 | 約 8.4 万円 | 約 21.6 万円 | 0 円 | 約 8,600 円 | 約 8,600 円 |
| 300 万円 | 10 万円 | 20 万円 | 0 円 | 約 11,350 円 | 約 11,350 円 |
| 400 万円 | 10 万円 | 20 万円 | 約 10,210 円 | 約 20,000 円 | 約 30,210 円 |
| 500 万円 | 10 万円 | 20 万円 | 約 10,210 円 | 約 24,800 円 | 約 35,010 円 |
| 700 万円 | 10 万円 | 20 万円 | 約 29,916 円 | 約 20,000 円 | 約 49,916 円 |
| 1,000 万円 | 10 万円 | 20 万円 | 約 40,840 円 | 約 20,000 円 | 約 60,840 円 |
注: 上記は大阪市・青色申告特別控除 65 万円・経費 60 万円/年・単身・40〜64 歳・補填金なし・医療費 30 万円の概算です。居住地(住民税率は自治体により異なる)・経費額・家族構成・他の控除によって実際の節税額は変わります。所得税が 0 円の場合も住民税で節税効果が生じることがあります。
→ 自分の条件で試算する: シミュレータを開く
補填金の取り扱い
医療費から差し引く必要がある「補填される金額」とは次のものです1。
- 生命保険・医療保険から支払われた入院給付金・手術給付金
- 健康保険の高額療養費・付加給付
- 健康保険の傷病手当金(医療費の補填目的で受け取ったもの)
- 損害保険の医療費支払い
補填は医療費ごとに対応して差し引きます。ある医療費に対する補填額がその医療費を超える場合、超過分を他の医療費から引くことはできません(差額はなかったものとして扱います)1。
セルフメディケーション税制との選択
同一年に一般の医療費控除とセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費の控除)を重複して利用することはできません2。
- 一般の医療費控除: 病院の診療費・処方薬・入院費など。足切りは合計所得×5%または 10 万円
- セルフメディケーション税制: 対象の市販薬(スイッチ OTC 医薬品等)の購入費 12,000 円超の部分(上限 88,000 円)
どちらを選ぶかは医療費の内容と金額によります。どちらが有利かを個別に判断するには税理士に相談してください。
申告方法
医療費控除を受けるには確定申告が必要です1。申告には医療費の領収書または「医療費控除の明細書」を作成して添付します(領収書は 5 年間保存が必要)。
高額療養費や保険金の補填額は、申告前に正確な金額を確認してから差し引いてください。
よくある質問
売上が低く所得税ゼロでも医療費控除を申告する意味はありますか?
住民税の節税効果が残る場合があります。所得税がゼロでも、住民税の課税所得がある場合は医療費控除で住民税が減ります(住民税率 10%)。合計所得が低い方は足切りも低いため、比較的少ない医療費から住民税節税が生じる場合があります。
家族の医療費も合算できますか?
生計を一にする配偶者や親族の医療費は合算できます1。ただし配偶者の所得が一定以上ある場合でも、生計を一にしていれば合算対象です。
赤字の場合は?
事業所得が赤字(損失)の場合、合計所得はゼロまたはマイナスになります。医療費控除の足切りは「合計所得×5%」と「10 万円」の小さい方なので、合計所得がゼロに近いほど足切りも下がります。ただし課税所得自体がなければ節税効果もありません。
令和8年度の基礎控除引き上げの影響は?
令和8年 12 月 1 日施行の基礎控除の引き上げにより、課税所得が変わります。早見表の節税額は引き上げ前の数値を含む概算です。詳細は税理士に相談してください。
自分の節税額を確認する
CashOnHand のシミュレータでは、売上・経費・各種控除を入力すると令和8年度の所得税・住民税の概算を確認できます。医療費控除を入力して節税額を試算してみてください。
→ シミュレータを開く (登録不要・無料・ローカル動作)
住民税の計算の詳細は 個人事業主の住民税の計算 を参照してください。
注記・免責
本記事は令和8年度の一般的な情報であり、個別の税務の助言ではありません。医療費控除の申告・計算については税理士または税務署に相談してください。早見表は CashOnHand の計算エンジンによる概算(大阪市・青色申告特別控除 65 万円・経費 60 万円/年・単身・40〜64 歳)であり、実際の節税額とは異なります。居住地(自治体により住民税率が異なる)・経費・控除・家族構成によって大きく変わります。税制は毎年改正される可能性があるため、最新情報は国税庁の公式サイトで確認してください。
最終更新: 2026-08-24
出典
Footnotes
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国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm (最終確認 2026-08-24) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
国税庁「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm (最終確認 2026-08-24) ↩