生命保険料控除の上限 — 個人事業主の確定申告での控除額 (令和8年度)
最終更新: 2026-08-31
目次
個人事業主が支払う生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料は、「生命保険料控除」として所得控除になります。この記事では令和8年度 (2026年) の制度にもとづき、3区分の上限・新旧制度の計算式・売上別の実効節税額・確定申告での記入方法を整理します。
要点 (令和8年度)
- 生命保険料控除は「一般・介護医療・個人年金」の3区分に分かれる
- 所得税の合計上限は 120,000円、住民税の合計上限は 70,000円
- 2012年以後の契約は「新制度」、それ以前は「旧制度」で計算式が異なる
- 控除で減る税額は掛金総額より常に少ない — 差額は手元から流出する
- 令和8年分限定: 23歳未満の扶養親族がいる場合は一般枠 (新制度・所得税) が6万円に拡充
手取り全体の計算の流れは 個人事業主の手取り計算 を参照してください。
生命保険料控除の3区分
令和8年度の生命保険料控除は次の3区分で構成されます1。
| 区分 | 対象となる保険の例 | 制度 |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 死亡保険・終身保険・養老保険など | 新旧両制度 |
| 介護医療保険料控除 | 医療保険・がん保険・介護保険など | 新制度のみ |
| 個人年金保険料控除 | 個人年金保険 (税制適格特約付き) | 新旧両制度 |
「介護医療保険料控除」は2012年 (平成24年) 以降の新制度で追加された区分です。旧制度 (2011年以前の契約) は一般・個人年金の2区分のみです。
新旧制度の区分と計算式
契約日が 2012年 (平成24年) 1月1日以後 なら「新制度」、2011年 (平成23年) 12月31日以前 なら「旧制度」で計算します1。
同じ区分 (例: 一般生命保険料) に新旧両方の契約がある場合は、それぞれを計算して合計しますが、合計後は新制度の上限でキャップされます。
所得税の控除額計算式
新制度 (2012年以降の契約): 3区分それぞれ同じ式を適用し、上限 40,000円。
| 年間払込保険料 | 控除額の計算式 |
|---|---|
| 20,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 20,001円〜40,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 10,000円 |
| 40,001円〜80,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 20,000円 |
| 80,001円以上 | 40,000円 (上限) |
旧制度 (2011年以前の契約): 一般・個人年金の2区分のみ、上限 50,000円。
| 年間払込保険料 | 控除額の計算式 |
|---|---|
| 25,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 25,001円〜50,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 12,500円 |
| 50,001円〜100,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 25,000円 |
| 100,001円以上 | 50,000円 (上限) |
住民税の控除額計算式
新制度: 3区分それぞれ上限 28,000円。
| 年間払込保険料 | 控除額の計算式 |
|---|---|
| 12,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 12,001円〜32,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 6,000円 |
| 32,001円〜56,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 14,000円 |
| 56,001円以上 | 28,000円 (上限) |
旧制度: 一般・個人年金の2区分のみ、上限 35,000円。
| 年間払込保険料 | 控除額の計算式 |
|---|---|
| 15,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 15,001円〜40,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 7,500円 |
| 40,001円〜70,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 17,500円 |
| 70,001円以上 | 35,000円 (上限) |
区分・制度別の上限マトリクス
| 区分 | 所得税 (新制度上限) | 所得税 (旧制度上限) | 住民税 (新制度上限) | 住民税 (旧制度上限) |
|---|---|---|---|---|
| 一般生命保険料 | 40,000円 | 50,000円 | 28,000円 | 35,000円 |
| 介護医療保険料 | 40,000円 | — (旧制度なし) | 28,000円 | — (旧制度なし) |
| 個人年金保険料 | 40,000円 | 50,000円 | 28,000円 | 35,000円 |
| 3区分の合計上限 | 120,000円 | (旧制度のみなら 100,000円) | 70,000円 | (旧制度のみなら 70,000円) |
3区分すべての新制度保険料が年間 80,001円以上であれば、3区分それぞれ 40,000円ずつで合計 120,000円の控除になります。
節税額の早見表 (シミュレータ由来の試算値)
以下は CashOnHand の計算エンジンによる試算です。前提: 新宿区在住・40〜64歳・単身・青色申告 (65万円控除)・月間経費 5万円。住民税は都道府県・市区町村の合算 (所得割 10%)。
新制度・一般生命保険料のみ (年間保険料 120,000円 → 控除額 40,000円)
| 売上 (税込) | 所得税の軽減額 | 住民税の軽減額 | 合計節税額 (概算) | 年間保険料 (参考) |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約 2,042円 | 約 2,900円 | 約 4,942円 | 120,000円 |
| 600万円 | 約 4,084円 | 約 2,800円 | 約 6,884円 | 120,000円 |
| 800万円 | 約 8,168円 | 約 2,800円 | 約 10,968円 | 120,000円 |
年間保険料 120,000円に対して節税額は最大でも約 10,968円です。差額の約 109,000円以上は手元から流出します。
3区分フル活用 (一般・介護医療・個人年金 各年間120,000円 → 合計控除額 120,000円)
| 売上 (税込) | 所得税の軽減額 | 住民税の軽減額 | 合計節税額 (概算) | 年間保険料合計 (参考) |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約 6,126円 | 約 7,000円 | 約 13,126円 | 360,000円 |
| 600万円 | 約 12,252円 | 約 7,000円 | 約 19,252円 | 360,000円 |
| 800万円 | 約 24,504円 | 約 7,000円 | 約 31,504円 | 360,000円 |
3区分フル活用で年間保険料が 360,000円、合計節税額が最大でも約 31,504円です。差額の約 328,000円は保障の対価として手元から流出します。
自分の売上・経費・世帯構成での試算は CashOnHand のシミュレータ をご利用ください。
令和8年分の特例: 23歳未満の扶養親族がいる場合
令和8年分 (2027年2〜3月に申告) において、23歳未満の扶養親族を持つ方は、新制度の「一般生命保険料控除」の所得税上限が 40,000円から 60,000円に拡充 されます2。
- 対象: 令和8年分と令和9年分 (令和9年分への延長は法令で確認のこと)
- 適用条件: 年齢23歳未満の扶養親族がいること (配偶者は扶養親族に含まない)
- 対象区分: 新制度の一般生命保険料控除のみ。介護医療・個人年金の各上限や住民税の上限は変わらない
- 生命保険料控除全体の合計上限は変わらない (所得税 120,000円)
年間保険料が 80,001円以上ある場合、通常より 20,000円多く所得控除を受けられます。その追加節税額の目安は所得税の限界税率によって異なります。
| 課税所得の目安 | 限界税率 | 追加 20,000円控除の節税額 (所得税のみ) |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約 1,021円 |
| 195万〜330万円 | 10% | 約 2,042円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 約 4,084円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 約 4,697円 |
※所得税に復興特別所得税 (2.1%) を乗じた概算値。住民税の上限は変わらないため住民税の追加節税はありません。
確定申告での記入方法
年末調整がない個人事業主は、確定申告で自ら控除を申告します。
- 控除証明書の受け取り: 保険会社から10〜11月頃に「生命保険料控除証明書」が届きます。
- 控除額の計算: 上記の計算式 (または証明書に記載の「申告額の参考」) を使って区分ごとに控除額を計算します。
- 確定申告書への記入: 確定申告書 第一表の「生命保険料控除」欄に合計控除額を記入します。e-Tax を使う場合は証明書 XML データを読み込むと自動入力されます。
旧制度・新制度が混在する場合は、区分ごとに有利な計算方法を選んで合算します。計算の詳細は国税庁の確定申告書作成コーナーの手引きを参照してください1。
生命保険料控除と節税について
生命保険料は保障の対価として支払うものであり、税の軽減は付随する効果です。上記の早見表が示すとおり、控除で軽減される税額は払い込んだ保険料を大幅に下回ります。
- 自己拠出型控除の共通点: 生命保険料・iDeCo・小規模企業共済はいずれも「税は減るが掛金は手元から出る」性質を持ちます
- 節税額と手出しは別物: 年間保険料 120,000円で節税額が 6,884円なら、差額の 113,116円は手元から流出しています
- 生命保険料控除を申告することは権利の行使ですが、保険加入の要否は保障内容・保険料の水準で判断するものです
iDeCo や小規模企業共済との比較・選択については 小規模企業共済の控除はいくら も参考にしてください。
最終更新: 令和8年 (2026年) 8月31日 / 対象年度: 令和8年分 (2026年分)
免責: この記事は令和8年度の税制・法令にもとづく一般的な情報提供を目的としており、特定の方への税務助言ではありません。実際の申告にあたっては税理士への相談または最新の国税庁公式情報を確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
Footnotes
-
国税庁「No.1140 生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm ↩ ↩2 ↩3
-
財務省「令和8年度税制改正の大綱」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf (第一 所得税 一 生命保険料控除の特例) ↩